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PRESIDENT INTERVIEW // 社長インタビュー

株式会社日野ヒューテック 代表取締役 社長

高橋 正憲 MASANORI TAKAHASHI

一人一人が、
プロとして生き生きと仕事をし
そのやりがいや達成感を感じて欲しい

Q.01 社長になるまでの経歴を教えてください。

髙橋:

実は私、デザイナー出身なんです。社長になるまでの42年間 日野自動車に勤務し、その内 38年間 日野自動車のデザイン部で、バスやトラック、その他トヨタ自動車のRVのデザインを担当していました。デザイン部長を経験したのち定年を迎え、第一線を退いてモーターショー展示車両のデザイン対応等をしておりましたが、唐突に日野ヒューテック社長の内示を受けました。

Q.02 社内デザイナーから子会社の社長への転身は、大変珍しいと思うのですが、
当初戸惑いなどはありませんでしたか?

髙橋:

初めは「なぜ私が?」と驚きました。当初デザイナーの仕事と社長業は全く異なるものだと思ったからです。ただ、実際に社長をやってみると、デザイナーの仕事も経営と相通じるものがあると思いました。デザイン部には人事総務・営業などの機能は当然ありませんが、デザインにも予算が関わりますので金銭感覚は重要です。数十人のスタッフでひとつのデザインに取り組むことも多いため、リーダーシップも問われます。なにより、デザイナーは製品が実際に使用される際の環境や方法を考慮しながら計画する必要があり、この点で想像力や製品を使う人への思いやりの気持ちが要求されます。また、細部にこだわるだけでなく、製品全体のバランスを考えながら、お客様に受け入れて頂けるデザインを生み出す必要があり、全体を俯瞰して捉えることが要求される点も、会社経営と大きく重なる部分だと思いました。

Q.03 経営をするにあたってどのようなことを大切にしていますか?

髙橋:

現場に近い社長であるということを大切にしています。日野ヒューテックは多種多様な仕事をしているのですが、私は社長就任当初、誰がどこで、どんな仕事をどのようにしているのか、あまり良く知りませんでした。まずは現地現物で、自分達の仕事を知る事が大切と考え、全国全ての拠点を回りました。現場へ行くと色々なことがわかります。上がってくるデータだけではわからない現場の生の声を聞くことによって、解決すべき課題が浮かび上がり、また、指示も具体的に出すことができます。さらに、現場で働くスタッフは、どの業種の方も自分の仕事に誇りと責任をもっており、そのような方と話をすると非常に多くの事を教えて貰えます。併せて、たくさんの刺激を受ける事も出来ます。社長3年目の今も、毎年全拠点を回り、生の声を聞き、それを踏まえて経営の方針を策定しています。行く先々で心を込めて「有難う御座います。ご苦労様。」と声掛けする事を忘れないようにしています。皆さん誇りを持って大変良い仕事をしている方々です、「敬意を持って挨拶する事からが私の務め。」と思っています。

Q.04 社長になる前とあととで生活なども変わったのではないですか?

髙橋:

休みの日は犬と散歩をしたり、ドライブをしたりして気分転換をしていますが、どこへ行くにもタブレットと携帯電話を常に持ち歩き、何かあったときに24時間対応できるようにしています。息抜きにならないのではと思われますが、デザイナーの性分で休日でも仕事に関係のあるモノが目に入ると仕事の事を考えてしまう事が普通でした。社長になって変化したところは、常に何か事が起こった場合に備えて、連絡が取れるようにお守りを持ち歩く必要が出来た事だと思います。

Q.05 座右の銘はありますか?

髙橋:

『日々是好日』です。これは中国唐時代の禅の高僧である雲南禅師の教えの一つです。この言葉は「毎日が平安で無事の日である」と文字通りに解釈するのではありません。「どんな好悪の出来事があっても、この一日は二度とないかけがえの無い一時であり、一日である。この一日を全身全霊で生きることができれば、まさに日々是好日となる。好日は願って得られるものではなく、自らが人生に日々好日を見出すために全身全霊で生きねばならない。」という積極的な意味なのです。

私は、この言葉を「つねに前向きな気持ちを維持し、問題を先送りせず、また、自分に厳しく、日々精一杯努力して、日々を好日にしていこう」というように私なりに解釈しています。社長室に掲げてある「日々是好日」の額は、蒔絵職人であった私の祖父が99歳の記念に書いてくれたもので、毎日出勤すると「今日こそ悔いを残さないように、精一杯仕事をしよう。」とその書に誓い、帰宅時には、「今日は、きちんとできたかな?」と、書を前にして、1日を振り返るようにしています。やり切ったと思える日は少なく、まだ努力が不十分なのでしょうね。

Q.06 日野ヒューテックの従業員の皆さんには、何を望みますか?

髙橋:

従業員には3つの志を伝えています。これは、社長になる以前から私が自分に向けて言い聞かせてきたこととも重なります。
第一に、健康であること。どんなに高い能力があろうと、人は健康でないと力を発揮できません。元気はつらつとやっていれば、場も明るくなるし、チームワークも促されます。これはすべての出発点です。
第二に、謙虚であること。謙虚であれば、自分の周囲の人や物から様々なことを学ぶことができます。慢心せずに学ぶ心を継続させることが大切です。
第三に、プロであること。従業員一人ひとりが技術・技能を磨き、全員が自分の専門分野でプロとしての誇りを持つことによって、自分が組織を発展させていくという当事者意識を持つことができます。この点においては、自分を組織の一員というより、一人のプロフェッショナルだと考えることが大切です。
従業員には、日野自動車の子会社であるという認識を超えて、一人ひとりが日野自動車グループを発展させていくんだという自負心を持ち、自分が何のために働くのかということを常に考え、日々技術力・専門性を磨いて欲しいと願っています。そのためには、私は協力を惜しみませんし、後押ししたいと考えています。

Q.07 最後に、髙橋社長ご自身の目標をお聞かせください。

髙橋:

私個人の目標と言うか、重要な仕事は従業員全員を幸せにする事だと考えています。 一人ひとりが目的意識とプロとしての誇りをもって働ければ、仕事のやりがいを感じることができます。また、その仕事によって利益をあげることができれば、従業員の皆さんの処遇も向上させられ、みんなが幸せになることができると考えています。そういう希望のある会社にすることが私の仕事です。
数字を示して、利益を上げるという点だけに偏ってしまうと、厳しすぎる経費削減や達成困難なノルマの設定等の施策に至ってしまい、誰も幸せになりませんし、数値を達成するために問題を起こしかねません。やはり、現場では一人ひとりがプロとして生き生きと仕事をし、やりがいや達成感を感じて欲しいのです。そこで、私は、先ほどの3つの理念が大切になってくると思っています。従業員には、3つの理念をまとめ「もっとあなた自身の力を伸ばして、元気にやってください」と伝えています。そういう一人ひとりが生き生きと仕事をすることができる環境を作るのが私の仕事ですね。この目標はまだまだ道半ばですが、絶対に達成するつもりです。

日野ヒューテックでは、朝7時半頃、工場に向かう従業員が明るく声を掛け合って挨拶をしています。当たり前の光景ですが、毎朝この光景を見るたびに、日々是好日という言葉を思い出し、社長として身の引き締まる思いがしています。